将棋のある風景

 四月の道場は、小学生がいつもに比べてやや少なかった。土曜のこども教室は、90年代の半ばから始まった。当時は、溝口から来ていた小学生のわずか一人で、他は大人と高校生だった。で、「小学生が一人では寂しいだろう。」と漠然と思い、新聞の観戦記欄に「土曜こども教室」と書いたら、予想を超えた反響があり、一気に小学生が増えた。そうして今日まで来たが、満員盛況の時代もあれば、数人しか小学生の集まらない時代もあった。
 で、溝口の小学生は、中学校・高校と将棋を続け、県代表として活躍したが、大学進学後は将棋から遠ざかっていったようである。そして、社会人になって5年目のこの四月、異動で米子市内の小学校に赴任が決まった。
 一昨日は道場を訪ねてくれて、懐かしい顔を見せてくれた。小学生や本池君らと指したりして、その後、少し話した。「小学校で将棋クラブを始めました。」子供の頃は無口な子だったが、今は違う。饒舌でしかも分かりやすく話す。「A君って、知ってる?」と私が返すと、「はい、A君が一番強いんです。大駒を思い切りよく切ったりするんです。」

 16年前、上福原の道場で一人黙々と将棋を指していた小学生が、教員となり余暇に学校の教室で子供達に将棋を教えている。何か少し救われたような気持ちになった一日であった。



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