K氏とは?(中の続き)

夢の挑戦

 93年(平成5年)秋、K氏は、第16期西部アマ将棋名人位挑戦者決定大会で優勝、名人挑戦権を獲得した。当時26歳、最年少の挑戦者であった。


 以下は、当時の日本海新聞より。
 名人戦挑戦者を決める注目のAクラスでは、池本四段が初優勝を飾り、名人位に挑むことになった 池本四段は「名人の平井さんとは道場で頻繁に対戦して手のうちがよくわかっているので、平井さんの将棋をさらに研究して名人になりたい」と抱負を話していた。
 成績は次の通り。
【Aクラス】優勝:池本健(米子市)準優勝:山中幸雄(同)3位:山住道明(同)三木徹(同)
【Bクラス】優勝:石原衛(米子市)準優勝:河崎豊(同)3位:尾谷栄(同)、森脇俊郎(美保関町
【Cクラス】優勝:黒田昭一(米子市)準優勝:宅野岩男(岸本町)3位:田浪誠治(会見町)、松本公一(米子市
【学生名人戦】優勝:世良長久(倉吉東中)準優勝:南波崇(岸本小)3位:鳥橋孝一(東山中)



Kくん、力を抜け
 第16期西部名人戦三番勝負の日本海新聞観戦記(山中幸雄)から。
平成5年11月14日
第16期西部名人戦三番勝負 第二局 新日本海新聞社西部本社
▲名人 平井正人(米子市、43歳)
△四段 池本健 (米子市、26歳)


▲7六歩△3四歩▲4八銀△5四歩▲5六歩△5二飛▲5七銀△8八角成▲同銀△4二銀▲6八玉△3三銀▲7八玉△6二五▲5八金右△7二玉▲6六歩△5五歩▲同歩△同飛(図)



 平井名人先勝のあと挑戦者の池本四段の巻き返しを期待したい。
 まず両雄の簡単な紹介。名人の平井正人氏は、囲碁藤沢秀行先生の棋聖戦での活躍と同様に、この西部名人戦で神がかり的強さを発揮する。西部の平井といえば鳥取県ではご存じない方はいない。
 一方の挑戦者池本健四段は米子の若手の第一人者として売り出し中である。挑戦者決定戦では私との決勝戦になり実力の違いを見せつけられたばかりである。元アマ名人戦山口県代表としても有名であり、人格者である。
 最初にお断りしておくが、戦前予想で池本四段二勝一敗でのタイトル奪取と私は予想した。そういう事情もあり池本四段ひいきで観戦記を進めていくので、平井名人とそのファンには申し訳ない。局面は後手の池本四段が注文をつけ、角換わりの力戦振飛車に誘導、平井名人は追従している。


(図)▲5六歩△5一飛▲9六歩△3二金▲6七金△4四銀▲7七銀△6二銀▲7五歩△3三桂▲4六歩△2四歩▲2六歩△2一飛▲4七角△8二玉(B図)



 本譜は、平井名人の飛車先の歩が工夫で、局面をリードしているようにみえる。▲4六歩▲4七角が名人らしい本に書いてない手で池本四段の打ち気をそらしている。猛牛対闘牛士といったところか?
 局後の検討ではB図の△8二玉では△2五歩▲同歩△l四角と無理やり2筋に手をつける所だったようだ。すべての変化に池本四段不満なし!の結論だった。難しい事と言えば、先手は持久戦指向、後手は急戦指向で、すんなり局面がおさまれば、金銀の働きから見て平井名人が指しやすい。


(B図)▲8六歩△9四歩▲8五歩△7二金▲7六銀△6四歩▲6五歩△同歩▲同銀△5三銀引▲5五歩△6四歩▲7六銀△5四歩▲6六銀△5五歩▲同銀 △5四歩▲6六銀△4四歩▲7四歩△同歩▲7五歩△4五歩(C図)



 前記で指摘した心配が本譜で少しずつ出ているようだ。平井名人の右側には駒が少ない。池本四段の右側(向かって)には金が遊んでいる。つまり焦土戦術で左側のみの戦いになってしまっている。名人の術中にはまってしまった。池本四段が早く気づけば△7一玉△6一玉△5二玉と右側への早逃げで△3二金にカツを入れることができる。
 池本くん、力を抜けー。


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