K氏とは?(前)

 昨日の日記で、指導員がK氏の再登場に期待していました。そこで、07年10月の日記のリピートで、K氏について振り返ってみます。 



I was born ...

 西部名人戦が創設されたのは78年(昭和53年)で、故高木栄典支部長や本居碩夫氏が日本海新聞社に働きかけ実現したものである。そして、この棋戦は県西部地区の最大の棋戦として発展していった。


 当時の米子市内の各中学校には将棋クラブがあり結構盛んだったので、西部名人戦はクラブの中学生の関心事であった。K氏もその一人で、本格的に将棋を始めたのは、中学3年の81年(昭和56年)頃のこと。今と違ってジュニアクラスがなかったので、大会に出ることはなかった。
 この頃、級友の三木徹氏らを誘って、唯一の中学生の大会であった米子市中学校対抗戦(3人一組の団体戦)に出場した。会場は米子市上福原の西部支部道場で、市内のほとんどの学校が参加した。その中にショートヘアの女子が一人いた。当時としては珍しい紅一点は、美保中の先灘さんであった。
 大会はK氏の湊山中が、ライバルの福原中を倒し、優勝した。
 明けて82年1月、湊山中の始業式の会場で、校長先生から特別に表彰を受けた。級友らと過ごした中学生時代のよき思い出である。


 写真は、K氏が其の頃の新聞の観戦記や大会結果の切抜きを綴ったノート。
 表紙に英語で落書きされているのは、I was born on November 24.多分、バースデー?


将棋にうち込んだ高校時代
 K氏は高校進学後、米子将棋同好会(市内博労町)に通い、また、西部支部の大会に積極的に参加していた。その強さは当時の高校生としては別格であり、将棋に対する真摯な姿勢は周囲の目を惹き、その将来を大いに嘱望されていた。
 一方で、西部棋界は若手三強(平井、山住、興津)の台頭が著しく、K氏は三強を目標に日々将棋にうち込んでいたのである。
 83年(昭和58年)の鳥取県西部棋聖戦の記事から、当時の様子を見てみたい。K氏16歳の夏で、熱気あふれる文章は、当時の西部棋界の隆盛を伝えている。以下は当時の産経新聞の記事(K氏のノートの新聞切り抜き)から。
 


  日本将標連盟県西部支部(高木栄典支部長)主催、サンケイ新聞社後援の第四回県西部アマチュア棋聖戦は、米子市皆生温泉の菊水本館で開かれ、同市や境港市など西部地区から参加した腕自慢のアマチュア棋士70人が、終日熱戦を繰り広げた。


 試合は前回と同じくA級、B級、C級、D級の四部門に分かれ、それぞれ三戦して二勝した選手たち三十五人がトーナメント戦に進出、日ころ鍛えた技を競い合った。選手たちは中盤の難所にさしかかると、長考に次ぐ長考で″静かな対決。場内はむんむんする熱気に包まれた。
 今回は中高校生が初参加。池本健君(米子市・米子高二年)ら高核生3人は強豪がひしめくA級、中学生3人はD級でと善戦した。また、実力五段を誇る勝部素光さん(46)は、長男の慎一郎君(写真・福原中二年)とともに親子で出場、勝部さんは見事に予戦を通過したものの、慎一郎君は緒戦で敗れ、しきりに残念がっていた。


 各級の決勝戦は夕方にもつれ込んだが、好対局の末、実力NO.1に与えられる第四期西部アマ棋聖位(A級優勝者)は、平井正人四段が昨年につづいて二年連続獲得した。また、各級優勝者には、サンケイ新聞社からトロフィーと表彰状が贈られた。
 大会は白熱した好勝負が相次ぎ、決勝戦は準決勝戦で負けた人たちも対局のまわりを一囲んで観戦するなどムードは一段と盛りあがった。
 A級の決勝戦は昨年の覇者平井四段と山住道明三段の対戦となった。序盤、山住三段が先手、先手と攻め、そのまま押し切るかに見えた。しかし、平井四段は終盤になって盛り返し、結局百二十手で逆転勝ちした。
 

 各級の優勝者と準優勝者は次の通り。(敬称略)
▽A級 優勝 平井正人(米子市)  準優勝 山住道明(米子市
▽B級 優勝 田中清春米子市)  準優勝 永江経夫(米子市
▽C級 優勝 久米沢与音雄(米子市)準優勝 松本宏(米子市
▽D級 優勝 福島栄治(米子市)  準優勝 尾崎武夫(西伯町)


名人の背中が見えた 
 84年(昭和59年)、18歳のK氏は西部名人戦挑戦者決定大会の決勝戦に進出、中学生時代からの憧れのタイトルに大きく近づいた。勝てば史上最年少の挑戦者である。K氏の実力が認知された瞬間でもあった。以下、当時の日本海新聞の記事(K氏のノートの新聞の切り抜き)から。



 第七期鳥取県西部名人戦将棋大会(新日本海新聞社主催、日将連県西部支部共催)は二十五日、米子市東町の市総合研修センターに七十人の将棋愛好家が集まって開かれ、注目のAクラスでは山中一央四段(写真・西伯郡会見町)が優勝し、現名人の平井正人四段への挑戦権を獲得した。
 注目のAクラスは、角行孝、興津信之、高橋正美、井原誠、山中一央の各氏ら強豪ぞろい。実力伯仲で、同クラス決勝トーナメントは八人による星のつぶし合いとなった。
 決勝は、山中さんと、池本健君(米子市・米子高校三年)との対戦となった。池本君は弱冠十八歳。ことし八月の西部支部夏季大会Bクラスで優勝するなど最近、急速に力をつけている新鋭で、この日もベテランの強豪を破って決勝進出を果たした。
 決勝は、池本君の居飛車左美濃に対して、山中さんは四間飛車で対抗。中盤山中さんが玉頭で戦いをおこし、 一見無理攻めに見えたが、力で押し切り快勝した。
 山中さんは、「無理攻めだったが、相手のミスに助けられた。今回、強い人ばかりで予想外の勝利。名人決定戦では、平井さんは強いので一生懸命やるだけですが、きれいな将棋を指したい」と喜びと抱負を語っていた。 一方の池本君は「優勝できなくて残念」とひと一言。  
 名人決定戦は、平井正人現名人 と山中さんが三番勝負を行い、七期名人位を争う。

成績は次の通り。(敬称略)
【Aクラス】優勝:山中一央(会見町)準優勝:池本健(米子市)  3位:高橋正美(米子市)、永島未夫(安来市
【Bクラス】優勝:斉下克己(米子市)準優勝:石原賢二(安来市) 3位:小原良二(米子市)、渡辺秀雄(伯太町
【Cクラス】優勝:松本宏(米子市) 準優勝:足立健一(境港市) 3位:舶越禄郎(米子市)、大谷定弘(米子市
【Dクラス】優勝:松本憲美(米子市)準優勝:松下裕一郎(米子市)3位:安田彰(米子市


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