日本将棋考(後)
昨日の続きです。
9年前に書いた文章ですので、今とは時代背景が違います。(99年の日本海新聞より)
日本古将棋
日本の将棋が駒の再使用が認められていると述べたが、訂正の必要がある。というのは、現在23種類の将棋(古将棋)が確認されているようだが、その中にあって、小将棋(現在の将棋)のみが、駒の再使用を規定している。従って、現在我々の指している将棋が、世界の中でも日本の歴史の中でも異端ということになる。
で、日本の古将棋の中に、江戸時代に一部の人々の間で指された中国将棋を改良したものがあった。「支那小象戯(将棋)は我国では金鵬と呼ばれ、徳川時代に或る人々の間で流行した」*1。また、「荻生徂徠*2とその弟子達によって指し続けられたが、駒の種類が多く、それぞれの働きが大変煩雑で、徂徠の没後は指されなくなった」*3
この中国風将棋は、広象戯あるいは川中島将棋とも呼ばれていたようで、当時の政治・文化の先進国であった中国にひかれていく日本の文化人の一面がうかがわれる。
将棋の魅力
現在の中国でブームの将棋について、許建東氏*4は「将棋で一番魅力を感じたのは、持駒ルールだった。これは、シャンチーにもチェスにもない。普通は、捕獲した駒は再使用しない。周囲を海に囲まれた日本では、敵を殺すのではなく、服従させたり、味方に寝返らせたりして、政治権力を確立する。持駒ルールはそうした日本文化を反映していると思う。」と述べている。
こうした将棋の妙味によって、愛好者数は小中学生を中心に一万七千人に増えている。「ある中学で成績が中以下の学生を集めて日本将棋を学ばせたところ、半年後には数学の平均点が向上した」と学業への好影響にもふれている。
このようなブームの背景にあるのは、日本の経済力であろう。水が高い所から落ちるように、文化もその時々の強い国また持つ国から流れ落ちていく。江戸時代に中国将棋が普及したように、今度は中国で日本将棋ブームとなっている。
従って、今後日本の将棋が外国で普及していくためには、時代の一過性だけではなく、将棋の持つゲームとしての実力が問われていくことになると思う。
下の動画はシャンチーの縁台将棋。場所は台湾・台北市。
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