山陰名人戦名勝負3

karasunogyozui2008-03-28

 いよいよ終盤。この棋譜を持ってきてくれた池メン氏が中心となり、道場で何十番も並べ直した局面にさしかかった。
写真は3月16日の朝日レーティング山陰大会。原田君と対戦する藤井氏。


第16期山陰名人戦決勝譜
平成元年(89年)4月9日
米子市皆生温泉 弓ヶ浜荘 


▲藤井真司 (松江市、28歳)
平井正人 (米子市、38歳)


第5譜:白熱の好勝負
 カミソリと異名を持つ平井。切れ味の鋭いところが持ち味だが、本局は藤井のテクニックにかわされ、本来の持ち味が全く出せないまま中盤を迎えている。
 このまま終局となり、藤井会心の一局で三回目の山陰名人と見えたが、ここから平井の追い上げが素晴らしく、終盤、一手を争う自熱の好勝負となっていく。
 藤井が▲8六歩としたのがつまずきの第一歩。どうせ△9九飛成となるのに、この歩は打つ必要がなかった。△4五歩とぶつけられ、藤井必勝パターンとはいえ、何やらあやしげなムードとなってきた。△3五桂―△4七香とカラみつき、△5九竜と迫られ、藤井の表情が変わっていくのがはっきり見てとれる。
 自玉に手がつき出すと、必要以上に穴熊が堅く見えてくる。敵に向かっていく手はなし。五分の長考で▲3六歩と受けたが、△4八竜と王手をかけられた本国の最終図、さすがの強腕藤井も、負けを意識したのではなかろうか。



(第4図)▲6一飛成△2四角▲8六歩△9九飛成▲8一竜△4五歩▲同銀△3五桂▲3七金△4七香▲3九金△5九竜▲3六歩△2七桂成▲同銀△4八香成▲同金△同竜(第5図:指手通算94手)



第6譜:自慢の一着
 金銀四枚で囲われた、美しい美濃の堅陣だった藤井玉が、平井の猛攻でいびつな姿に変わってしまった。
 冷静に局面を眺めれば、まだ藤井が良さそうだが、完ぺきな序中盤を見てきた後だけに、盤側も次第に平井良しの声が多くなってくる。 
 この逆転ムードの追い風を、藤井が必死に受け止める。▲3八桂受けの後は一転して▲2六香から▲3五桂。小差勝負の形勢判断は、藤井の最も得意とするところである。この緊迫した局面で、自分を取り戻すところは、やっぱリタイトル保持者と感心させられる。
 銀を渡さなければ大丈夫、と2筋をがんがん攻めまくる藤井。銀桂交換から▲4三銀と打ち込んだが、危険なコマだけに、見ていてヒヤッとするような攻撃である。
 △4九竜に▲4三銀成。金銀がそろって詰みの順が回ってきた。向こうにいく手はないし、どうするのだろうと見ていたが、ここで▲1八玉の早逃げが藤井自慢の一着。何かありそうな玉形だが、意外と寄せが難しい。
 一分の読みで平井は△4八歩成としたが、この寄せ合いはどちらが勝っているのだろうか。


▲3八桂△4七歩▲2六香△4二角▲3五桂△3三金▲2四歩△同歩▲2三歩△同銀▲同桂不成△同金▲4三銀△4九竜▲4二銀成△同金▲1八玉△4八歩成(第6図:指手通算112手)



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