山陰名人戦名勝負 1

karasunogyozui2008-03-26

今日から4回、山陰名人戦の名勝負を紹介したい。
観戦記は山陰の第一人者の柳浦氏。なお、この観戦記掲載について、了解賜りたいと思います。
写真は昨年15度目の優勝を果たした藤井氏。


第16期山陰名人戦決勝譜
平成元年(89年)4月9日
米子市皆生温泉 弓ヶ浜荘 


▲藤井真司 (松江市、28歳)
平井正人 (米子市、38歳)


第1譜:藤井は中飛車
 山陰名人戦も、いよいよ決勝の一局を残すだけとなった。
 過去2回の優勝経験を持つ藤井真司と、鳥取の最後のトリデを守り初優勝に向け虎視眈々(こしたんたん)の平井正人の対戦。山陰実力NO1を決めるこの一戦は願ってもない好取組となった。
 定刻3時半。振り駒で先手となった藤井の▲7六歩で対局開始。
 プロのタイトル戦なら、ここでひとまず対局時計を止められ、写真撮影のために、藤井が何度となく▲7六歩を指すポーズをし続けるところだが、切れ負けルールで忙しいアマ棋戦では、よほどのことがない限りそれはなし。小気味よいテンポで、どんどん局面が進んでいく。
 藤井のとった作戦は▲5五歩と中央に位をはった中飛車。準決勝の対持田戦で、千日手局となった時と同じ戦形である。
 序盤から少しでも有利な局面を作ろうとする藤井に対し、平井はゆっくりと陣形整備。序盤速攻型の平井にしては、珍しくおとなしい序盤の滑り出しである。


▲7六歩△8四歩▲5六歩△3四歩▲5五歩△6二銀▲5八飛△4二玉▲7七角△8五歩▲6八銀△3二玉▲5七銀△5二金右▲4八玉△3三角▲5六銀△4四歩▲3八玉△2二玉 第1図(通算指手20手)



第2譜:居飛穴で対抗
 最近の山陰名人戦といえば、真っ先に浮かぶのが藤井の名前である。今回を含め五回の出場中、優勝二回、準優勝、三位各一回、そしてまた決勝進出と、出る度にほとんど負け知らず。勝率は何と九割という驚くべき数字を出している。 
 大局観がいい上に、しっかりと読み切る力を持っているから、大きな崩れを見せることがない。安定感抜群の藤井を破ることは、至難の技といえそうだ。
 難敵藤井に勝つにはこの戦法、と平井はあらかじめ戦形を決めていたようだ。何のためらいも見せず、△1二香から△1一王。対振飛車の万能薬・居飛穴である。
 この瞬間の藤井の表情を見ていたが、普段と変わらぬ余裕の表情で▲3八銀から▲4六歩。両者の読み筋は完全に一致していたようである。
 ▲5八金左に△7三銀。この瞬間、藤井の手が止まる。少考2分で▲4七金の自重を選んだが、気楽な練習将棋なら▲4五歩の決戦を選んでいたかもしれない。
 「一手1手を大切に」がモットーの藤井。戦いはもうしばらく進んでからのようである。


▲2八玉△1二香▲3八銀△1一玉▲4六歩△4三金▲6六歩△2二銀▲6五歩△7四歩▲6八飛△2四角▲4八飛△3一金▲5八金左△7三銀▲4七金△9四歩▲9六歩△6二飛 第2図(通算指手40手)



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