西部名人戦3番勝負
昨日行われた西部名人戦3番勝負、まず印象に残ったのは対局前の挑戦者と名人のスピーチでした。学生服姿も凛々しい二人は決意をしっかり述べ、昨年に比べずいぶん成長している印象でした。特に本池名人が防衛に対する強い思いを素直に語った言葉には感動しました。会場の拍手も多かったようです。三番勝負予想クイズの投票では、ほぼ互角。ほとんどの人が2勝1敗の接戦となると見ていたようです。私は挑戦者がわずかに有利ではとみていたのですが・・・。
早速第1局を振り返ってみたいと思います。
昨年よりパワーアップした二人。どんな将棋を見せてくれるのか楽しみです。注目の戦型ですが、先手の三森挑戦者いきなり▲5六歩。予想通りごきげん中飛車です。これに対して本池名人は△6二銀と受けて立ち、先手の▲5五歩を見て意表の相中飛車作戦に出ます。
先手の▲7七角を見た名人、玉の囲いもそこそこに機敏に△5四歩と仕掛けます。昨年は玉をがっちり囲う作戦でしたが、今年は序盤から積極的です。三森挑戦者早くも長考に沈みますが、角交換から▲5五歩の好手順で天王山の位を確保しました。ここからお互い戦機を探しながらのむずかしい駒組みが続きます。
△2四角が先手の浮き駒の金をねらった名人の勝負手です。先手▲6九金と引けば無難でしたが、強く▲5七角と合わせて手順に金を捌きにでます。このあたりに挑戦者の積極的な棋風がでています。
先手▲5七金と前進させましたが、続く名人の△6八角が挑戦者の読みにないすばらしい一手でした。ボナンザのような攻め方ですが、角・金交換ながら五筋の位を奪還し飛車をさばき、後手大優勢です。先手は歩切れが痛すぎます。
いきなり不利となってしまった三森挑戦者。何とか勝負形に持ち込みたいのですが、いつもの冴えが見られません。逆に本池名人は持ち味のからい受けを連発して、先手の攻めを完封します。△5七歩成が実現しては大差となりました。
続く第2局も、名人の速攻を受け損なった挑戦者。不利な体勢からの必死の手作りでしたが、またしても名人の丁寧な受けにはばまれ惨敗します。この一局は来年一月の日本海新聞の将棋観戦記でお楽しみください。
今回の三番勝負、予想に反して名人の二連勝で終わりました。昨年とはうって変わって2局とも序盤から厳しい戦いが繰り広げられ、そこで優劣が決まったシリーズでした。勝った本池名人のここ一番での勝負強さが印象に残った三番勝負でした。表彰式での名人は本当にうれしそうでした。一方、ハードな日程で疲れがあったのか十分に力を発揮できなかった挑戦者でしたが、最後まであきらめない敢闘精神は立派でした。来週の県アマ名人戦3番勝負では体調を整え万全な体制で勝負に臨んでもらいたいものです。すばらしい熱戦を戦った二人のさらなる活躍を期待したいと思います。
開始日時:2009/11/15(日) 00:00:00
先手:三森 和明
後手:本池 達也
棋戦:西部名人戦3番勝負 第一局
戦型:相中飛車
手合割:平手
▲5六歩 △6二銀 ▲5五歩 △6四歩 ▲5八飛 △6三銀
▲7六歩 △5二飛 ▲4八玉 △3四歩 ▲3八玉 △4二玉
▲7七角 △5四歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲2二角成 △同 銀
▲5五歩 △6三銀 ▲6八銀 △3三銀 ▲7七銀 △4四銀
▲6六銀 △3二玉 ▲7七桂 △4二金 ▲4八銀 △3三桂
▲5九飛 △7四歩 ▲2八玉 △6二金 ▲3八金 △7三桂
▲1六歩 △1四歩 ▲6八金 △2四角 ▲5七角 △同角成
▲同 金 △6八角 ▲6九飛 △5七角成 ▲同銀上 △5五銀
▲同 銀 △同 飛 ▲5八銀 △5一飛 ▲5九飛 △5六歩
▲4八銀 △6八金 ▲6六角 △6五歩 ▲4六角 △5九金
▲3三角成 △同 金 ▲5九銀 △5五銀 ▲6八角 △2四歩
▲4五金 △4四銀 ▲4六金 △6六歩 ▲3六桂 △5七歩成
▲6五桂 △同 桂 ▲9五角 △8四桂 ▲4四桂 △同 歩
▲4九銀 △6七歩成 ▲8六角 △6四歩 ▲5五銀 △7二桂
▲7五歩 △同 歩 ▲同 角 △7九飛 ▲8六角 △5四歩
▲6六歩 △7七桂成 ▲6四銀 △同 桂 ▲6五歩 △7六桂左
▲6四歩 △7二銀 ▲7七角 △同 と ▲7四桂 △7三金
▲6二桂成 △2一飛 ▲7四歩 △6四金 ▲7二成桂 △5九飛成
▲6二成桂 △4九竜 ▲5二成桂 △3八竜 ▲同 玉 △4九銀
▲2八玉 △3九角 ▲1八玉 △1七銀 ▲同 桂 △2八金
まで、120手で後手勝ち