仲良し道場2

karasunogyozui2009-10-27

 土曜日の道場、賑やかな雰囲気の片隅で、本棚から雑誌を取り出している中学生がいた。
「うわー、昭和50年の将棋世界だぁ〜」
「それって、いつ?」小学生が近づいて話しかける。
「え−と、昭和50年は1975年だから、34年前だ。」
「すごい昔だ!写真がみんな白黒だ。」小学生はまるで歴史上の出来事を目(ま)の当たりにしたような表情である。
「わか〜い。」と言って、中学生は中原名人の写真を指差す。そして、
「このヒゲの人、マ・ス・ダ・・・」と言って私の方を見るので、
「ああ、升田幸三だ。広島出身の・・・」と答える。


 しばらくすると、その雑誌を手にしながら、棋譜が並べたいという。大山康晴名人と内藤国男九段の対局で、二人でゆっくり時間をかけて並べていった。内容は、相振り模様の序盤が相居飛車となる変化に富んだ将棋で、終盤は持将棋かと思われたが、小駒一枚の差で最後は大山名人が勝つという長手数の将棋であった。フルマラソンに喩えるなら、最後に競技場のトラックを二人が全力疾走するようなものであった。
 この時、大山名人は52歳。その体力に私は感心していたが、中学生の方は「この将棋(の内容)はすごい。」と首を縦に振りながら繰り返している。側から離れなかった小学生は、盤面と中学生の表情を目で追っている。


 道場の本棚に眠っていた雑誌が、二人の少年に将棋の深さを教えてくれた土曜の午後であった。


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 画像の背景にあるのが道場の本棚。すべて会員はじめ皆様の寄付によるものです。