karasunogyozui2008-05-11

9日(金)夜、名人戦第3局大盤解説会が稲葉陽四段を招いて西部支部道場で開催されました。当初は平日なので人が集まってくれるか心配でしたが、30名以上の人が稲葉四段の解説を熱心に聞いてくれ最後まで大盛況でした。普段あまり大会などに参加されない人や、夜遅くなってから駆けつけてくれる人もいてあらためて名人戦への関心の高さを実感しました。稲葉四段の解説は的確かつ丁寧で、また聞き手の嶋田さんとの息もぴったりでリアルタイムでプロの将棋を楽しむことができました。


夕食休憩までの局面は森内名人の指しまわしがすばらしく、羽生挑戦者かなり苦しいのではないかとの見方でした。18時30分から戦いが再開されましが、ここからの羽生挑戦者の差し手は本当に凄みがありました。あとから棋譜を見て結果論で評価するのとはまったく違った感覚で将棋を楽しめたのは初めての経験でした。


解説会での楽しみは「次の一手名人戦」です。第一問は82手目△2四角と上がった局面です。候補手は1.2五歩2.7三歩成3.その他の手、です。半数以上の方が1.2五歩の正解手に手を上げられました。この局面なぜ▲2五歩と打たれると一手パスになる手を羽生挑戦者が指したのか私にはわかりませんでした。しかしこの2手が後の大逆転につながる流れのはじまりだったような気がします。ここから名人は入玉を目指しますが、挑戦者はそこに勝機を見出そうとしたのではないかと感じました。まさに恐るべき羽生の大局観です。


第二問は90手目△6二金の局面です。候補手は1.5五歩2.8四銀3.その他の手、です。
1.5五歩は稲葉四段推奨の手でなかなか良い手に思えました。2.8四銀は当然こう指したいところですが銀を渡すのは危ない気がするとの解説でした。正解は2.8四銀でした。このあたりから名人は時間に追われながらも方針通り一路入玉を目指します。しかしこの後の挑戦者の歩を使っての巧みな反撃手順はすばらしいものでした。


歴史的ポカといわれた▲9八銀の局面ですが、稲葉四段も銀を打って飛車を取りにゆく展開になるのでしょうかと解説され、聞き手の嶋田さんに△8六桂を指摘され「あっそうですね、これはだめですね。しかし流れからいって▲9八銀と打つ予定では」と解説されている最中に、名人が▲9八銀と指し、大きなどよめきが会場に起こりました。ここからの挑戦者の巧みな時間の使い方とすばらしい寄せには言葉もありません。まさに羽生マジックの片鱗に触れることのできた一局でした。大盤解説会にわざわざ足をはこんでいただいた皆さんにも大満足して帰っていただくことができました。稲葉陽四段、嶋田さん丁寧でわかりやすい解説、本当にありがとうございました。

※大逆転劇に立ち上がって解説を聞く観戦者