角行孝氏

 西部名人戦3番勝負まで、あと2日となった。
 昨年名人位に返り咲いた勝部素光氏は、1936年(昭和11年)生まれで今年71歳。スポーツ・芸能で言えば、長島茂雄里見浩太郎野際陽子と同年である。
 その勝部さんは、第3期西部名人戦で角行孝名人(写真境港市)に勝ち、新名人となったのが、1980年(昭和55年)。時に勝部氏は44歳、角氏は73歳であった。
 角氏は、1907年(明治40年)生まれで、1930年頃に佐々木二兵衛氏(境港市)に将棋を教わり、1936年から約5年間大阪に移住し、木見会*1で実力をつけた。戦後は県棋界の第一線で活躍した。若手顔負けの激しい攻め将棋が記憶に残っているが、普段はおだやかな人柄で誰からも慕われていた。
 故人となられた角氏。天国で勝部名人の将棋を見守っているに違いない。
 角氏の残した句を、勝部名人へのエールとしたい。


 正座して 盤に対(むか)えば 引き締まる 
   身に湧(わ)く闘志 敵陣を睨(にら)む


 幾十手 先きを必死に 読みて打つ
   将棋の駒に 気合を込めて


 片隅に いまだ燃え立つ 思ひあり 
   将棋名人位 あわよくばといふ

*1:大山名人・升田九段の師である木見九段主催のアマチュア棋会