将棋は執念

阿修羅像

平成13年11月18日
第24期西部名人戦三番勝負 第3局 第3譜  
▲名人 平野琢也(米子市、33歳)
△四段 池本健 (米子市、35歳)
写真は、奈良興福寺阿修羅立像)

(D図)△6七と▲同金△6九飛▲6八金打△5九飛成▲8四歩△7二銀▲同銀成△2二飛▲6二歩△5五馬▲8三歩成△8八馬▲同玉△7九角▲7七玉△6五桂▲8六玉△8五歩▲同玉△8四歩▲同と(E図)通算111手

 △6七とで金を一枚上ずらせ飛車を下ろしたが、▲6八金打と四枚目を投入されると、先手陣は気が遠くなるほど堅い。しかし、池本さんは執念の指し手を続ける。△5九飛成ではふつう1九飛成と香を取りそうなものだが、何かのときに龍で金を取れるようにと判断したのだろう。前譜で紹介した穴熊セオリーにのっとった考え方だ。
 また、△2二飛の自陣飛車も執念を感じさせる。池本さんの△5五馬にもう一枚受ける手もあったが、平野さんは攻め合って大丈夫と判断し、▲8三歩成と詰めろをかけた。
 しかし池本さんは、平野さんの玉に逆に詰めろがかかるほど追い上げる。最終一手前の△8四歩に▲同玉と取ると、何と先手玉は詰んでしまうのだ。△8三銀▲同玉△9三金から始まってかなり長手数の詰み。一秒で十数手詰めを解いてしまうパソコンソフトでさえも、答えるまでに三分以上かかるほど難解な手順だ。ここに指し手を書き記すことはできないが、腕に自慢の方は考えていただきたい。
 玉で取れと念力をかけて指した△8四歩だったが冷静に▲同とと取られてみると、依然詰めろはかかったままで適当な受けもなさそうだ。池本さん、絶体絶命の大ピンチをどう乗り切るのか。
(三木徹氏の観戦記より)