神戸・米子記念対局(3)

平成9年1月12日
米子市皆生温泉 松涛園


▲松平信一(神戸市)、野田敬三五段
△田中康晴(米子市)、淡路仁茂九段


 
(松平・田中戦)(D図)▲4六角△8二歩▲7二角△7三桂▲5四角成△7七歩成▲3四歩△同銀▲3五歩△2三銀
(野田・淡路戦)▲7四歩△8五桂▲8二角成△6七歩成▲9一馬△5八と▲同金△6九飛▲3七王△3九飛成(E図)


(松平・田中戦)▲4八金寄△9九竜▲5五馬左△3三香▲3六香△2五銀▲4四歩△5三金▲7二馬△4四金
(野田・淡路戦)▲4六王△5三銀▲1七桂△5四桂▲同馬引△同銀▲2五桂△5五銀▲同歩△4八竜(F図)


 局後の感想戦で、「支部長、この手ええ手やったねえ」。E図から6手目△2五銀(3六銀によると自陣の防備と相手王の上部脱出阻止)と8手目△5三金(遊び駒の活用で△5三銀より△5三金の方が力強い)を淡路先生は絶賛した。淡路先生は「分かりやすうしとこうかなあ」と言って、△4八竜で田中支部長と交替した。
 さて、この日米子産業体育館で行われた新春将棋大会には、山陰両県より百二十三名が参加。淡路先生らを迎えた午後一時、田中支部長の発声で、参加者全員、震災の犠牲者の冥福を祈って黙祷(もくとう)を行なった。(下の写真


(松平・田中戦)▲4八同金△9六竜▲5六桂△6八角▲5七銀△2八角▲3七銀△5七角成▲同金△4五銀
(野田・淡路戦)▲4七王△3六銀▲同銀△3七金▲5八王△9八竜(最終図)まで 通算116手 田中・淡路組の勝ち


 淡路先生からバトンを受けた田中支部長、終始優勢を堅持し、最後は淡路先生が△3六銀から寄せ切った。早速始まった感想戦は、解説が淡路先生、聞き手が野田先生。まるでNHKの将棋の時間をナマで見ているようで、記録係の私はひとりで興奮していた。ポイント、ポイントで、淡路先生が田中支部長の指し手を褒める。そのやりとりを松平さんがうれしそうに見ておられる。
 窓の外の美保湾には紺色の帳(とばり)が降り、島根半島の先端に漁(いさ)り火が二つ三つ見える。「さて会場を変えましょう」田中支部長の先導で、神戸の御三方を迎え、宴が始まった。おいしいお酒とおいしい料理で将棋談義に花が咲く。
 宴たけなわの頃、松涛園井上春隆料理長が神戸のお客さまにあいさつに来られた。料理長は準備万端で色紙と筆を用意。「淡路先生に一枚お願いしてよろしいですか?」淡路先生、二つ返事で快諾。筆を持って色紙に向かうと、少し構える。十数人の宴会の出席者は息を止めて見ている。
 不倒……銀白の色紙の上に、墨の色が太く力強い文字となっていく。震災から二年、神戸は復興に向けて躍進している。淡路先生、野田先生、松平さん、神戸元町支部湊川支部の皆さん、『不倒』の心でこれからも頑張って下さい。(山陰中央新報より)


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