思い出の鳥取県棋界18

 画像は96年山中氏の送別会。左から平井氏、山中氏、峰谷氏。
 山中さん、朝日町の養老の滝で待っていますよ。


山中幸雄氏の観戦記 4
平成7年(1995年)5月23日
米子市東福原 米子産業体育館
第八回アマ竜王戦県大会決勝譜
先手▲三段 山住道明(米子市・38歳)
後手△四段 畑中達司(米子市・30歳)



 さて本譜、王手馬も▲7七歩と受け、その後も▲4七銀引△4六歩と渋い受けを連発して、山住三段がゴールに一歩づつ近づいている。  
 決勝戦は各持時間四十分、切れ負け。「石になる」という表現をするが、「岩になる」状態になっている。ゴルフのイップスになってしまった。私も山住三段との対局で切れ勝ちをさせてもらったことがあるが、長考、切れ負けは定評があり、将棋に対する思い入れは感じるが、切れ負けになっては話にならない。畑中四段の△4八桂成〜△5八成桂〜△6九銀の筋は無茶苦茶に速い。駒割りは角桂交換、ほとんど角の丸得である。


(C図)▲7七歩△3九飛▲4七銀△1九馬▲4六歩△2九馬▲3一飛△4七馬▲同金△6四香▲5八銀△3八銀▲4八金△3六桂▲3八金△同飛成▲5六馬△3九竜 (D図)通算指手80手 



 ところで皆様は3二金戦法をご存じだろうか?一手目に後手なら△3二金、先手なら▲7八金と上がる戦法である。えっ何ですって、いつもやっているですって?申し訳ありません。あなたはヘボです。プロの日浦六段も「もし、金を上がれたら、端の香車でも上がってやる」と断言し、実戦で本当に香車を上がったという話が実際にある。森下八段も「△3二金戦法は志が低い。」と断定していましたが、最近前言を撤回している。
 本譜山住三段の3六歩からの右四間は手損でおかしいと常々思っていたが、撤回します。イップスも克服し完勝。初の県竜王というビッグタイトルを手にした。おめでとう山住さん。敗れはしたが畑中四段の決勝進出も立派。来期以降に優勝を狙ってほしい。
 山住三段から五年連続で「今年は竜王になります」と書かれた年賀状をもらっているが、夢が実現した。祝勝会を開き、師匠の平井氏が「おめでとう山住、よかったな」と目に涙を浮かべながら言われた時は、山住三段も感激のあまり言葉にならなかった。(山中幸雄


(D図)▲8六香△5一歩▲2一飛成△4八桂成▲9五桂△5八成桂▲8三桂成△7一王▲5八金△6九銀▲8八王△5八銀成▲4四角△6二金直▲7二成桂まで山住三段の勝ち(E図)指手通算95手