第17回アマ竜王戦県予選(04年)

 この棋戦は3年間東部が優勝、中でもこの2年の松本兄弟の優勝は県棋界の歴史を大きく変えた。3年連続Vの期待のかかる松本ファミリーであるが、実は3年前の大会で一つのドラマがあった。 
 当時の大会決勝譜の観戦記(04年5月の読売新聞)の抜粋から、振り返ってみたい。



 先手:四段 森田宏敏(鳥取市) 後手:四段:松本憲幸(鳥取市
第2譜「不惑」より
 背筋を伸ばし、駒運びも軽快な森田四段、前かがみの姿勢で駒を手に持つ松本四段。両者は対照的である。43歳の松本は鳥取西高時代、森田より2歳年長。アマ竜王戦の棋歴を見る限り、年少の森田が一歩リードしている・・・・
 松本はこの大会、準々決勝で次男の英樹君(中2)、準決勝で長男の憲太郎君(中3)と対戦した。因果な巡り合わせを経て今、2人のご子息が父の戦う姿を見ている。背に熱い視線を感じながら、正面には百戦錬磨の森田がいる。
第4譜「異変」
 森田は自身のBLOG「師範代の日記」でこう振り返っている。「1回戦で強敵平野君と。ここを勝って勢いに乗り、準決勝で山内君(鳥取市)に山陰名人戦決勝の雪辱をし、決勝は松本(父)氏と。優勢な将棋だったが、終盤大ポカをして逆転・・・」
第5譜「再逆転」
 森田は少考の後、▲6八銀打*1の着手。ここから松本は水を得た魚のごとく一気の寄せにでるが、9手目に森田の玉がスルッと9四へ。打歩詰なので先手に詰みはなく、逆に▲9三銀以下後手玉は詰みである。
 片方の手を額に、もう一方をあごに当て、盤を凝視する松本。両手を膝に乗せ、身体を少し後方に引く森田。特徴的な二人の姿が静止画像のように続く。
 2手後の松本の△7二金が運命を分けた一着。ここは、△9三歩が自玉の詰み筋を消し、相手玉の打歩詰みを打開する妙手で後手勝ちであった。森田は確かめるようにして13手目に▲9三香、再逆転の瞬間だった。
 4年ぶり3回目の代表は県内最多タイの記録。全国大会で活躍されることを祈っています。


 なお、前述のBLOG「師範代の日記」の続きは、「・・・しかし最後再逆転で、4年ぶり3回目の代表となった。それにしてもベスト8に3人ともとは松本ファミリー恐るべし。」となっている。

*1:譜面をアップする技術がないので、読みにくいかと思います。